「野球界が抱える問題を、より根源的なところまでに立ち返って、しっかりと研究してみる必要があるのではないか。いじめ、体罰、無意味な長時間練習…。野球界には、悪しき精神主義、根性主義が長らく生き続けています。まずは、この問題を徹底的に掘り下げてみたい―」

上の言葉は、プロ野球のジャイアンツやメジャーリーグで活躍した桑田真澄さんが、早稲田大学の大学院で学ぼうとした理由です。

「新・野球を学問する」(桑田真澄・平田竹男、新潮文庫)は、桑田さんと桑田さんの担当教員だった平田教授との対談で、桑田さんが大学院で何を学び、何を研究したのかが明らかにされています。

興味深いのは、桑田さんが従来の「野球道」に対して、それにとってかわるべき新たな野球道を提言していることです。

桑田さんは、従来の「野球道」が大きく分けて「練習量の重視」「絶対服従」「精神の鍛錬」の三つの言葉に定義できるとしています。

古い「野球道」の悪いところは、戦時中、野球は軍部から「敵性スポーツ」とあるとして弾圧されたことから、野球道は「軍部から野球を守るための『工夫』から来たもので、それが何と今日まで脈々と続いている」といいます

「指導者のみなさんは千本ノックや根性野球という価値観をほぼ当たり前のものとして受け入れているんです。それでは『どうしてそんな練習をしないといけないんですか?』と尋ねても、『いや、私はそうやって教えられた』というだけで、ほとんどの人は野球界の伝統的な価値観が作られた歴史を知らないんです」と書いています。

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その上で、野球道を「練習の質の重視(サイエンス)」「尊重(リスペクト)」「心の調和(バランス)」と再定義し、野球界の指導理念の再構築を提言しています。

「練習の質の重視」は、具体的には「効率的かつ合理的な練習、最新のスポーツ医学の活用、そして失敗の奨励です。失敗するからこそ、学んでいくわけですから」といいます

「尊重」は「まずは指導者と選手が互いにリスペクトし合うこと。そして先輩は後輩を思いやり、後輩は先輩を敬う。審判に文句を言ったり、野次を飛ばしたり、いまはそれが当たり前ですが、審判や対戦相手もリスペクトしなければいけないと思います」と書きます。 

桑田さんには「心の野球」(幻冬舎、幻冬舎文庫も)という著書もあります。

この本で桑田さんが伝えたいこととして挙げているのが二つあります。
一つが「努力」という言葉の解釈だといい、副題にもなっている「超効率的努力のススメ」を説いています。もう一つが「スポーツマンシップの大切さ」です。

桑田さんは「野球は人間性を磨くのにとても適したスポーツだと思う」と書きます

それは「人より早く、怪我することなく上達するためには、スポーツ医科学を勉強することで効率的、合理的な練習方法を考える必要がある。孤独やプレッシャーに耐えながら、勝負所で実力を発揮するためのメンタルタフネスを養うことができる」。

さらには「相手チームや審判、チームメイトや自分自身をリスペクトする態度も身につけることができる」からです

これは野球に限ったものではないでしょう。
すべてのスポーツが、「人間性を磨くのにとても適している」と、私は思います。

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