どんなときも本がある
つらいときも
さびしいときも
たのしいときも
どんなときも
本がある。
上に書いたのは、今回ご紹介する「10代のための読書地図」(本の雑誌編集部、本の雑誌社)の帯にある言葉です。この本は、そんな思い込めて、書店員さんや編集者、作家の方々がお薦めの本を紹介しています。
まず、目次をご覧ください。
最初に「本の雑誌が選んだ10代におすすめする100冊」として、選考委員3人による対談と、「小・中・高世代別&朝の読書・夏の読書感想文対応」という計100冊が掲載されています。
具体的には、小学生向けでは「モモ」(ミヒャエル・エンデ、岩波少年文庫)や「ムーミンシリーズ」(トーベ・ヤンソン、講談社)といった定番に加え、偕成社版の「三国志」がリストに入っていたりします。
中・高校生向きでは、「小説は楽しい、ミステリって面白いと思ってほしい」と、小説が多く選ばれています。私も読んだことのない本が多くあります。
「気になったものから読み始めて読書の世界を自分で広げてもらえればいいんじゃないでしょうか」。選考委員の一人は、対談をこう締めくくっています。私も、気になったものから(といっても、いっぱいあるのですが…)読んでみたいと思っています。
そして、本書の目玉といえるのは、「ジャンル別 10代おすすめ本ガイド」です。
目次でお分かりのように「ともだち」「部活」の運動部編、文化部編から「歴史」「性」「社会」「戦争」などまで、幅広いテーマごとに書店員さんらがお薦めの本を紹介しています。
部活の「運動部」では、書店員の方が、6ページにわたってお薦め本の解説をしてくれています。野球からサッカー、バスケ、陸上にとどまらず、ハンドボール部を描いた作品や、マネージャーや補欠が主人公の作品もあります。
「歴史」は、「冒頭に挙げたいおすすめ本は、高校の歴史教材である」に一文で始まります。この続きが面白いです。
「おそらく十代のみなさんがもっともすすめられたくないであろう種類の本であり、まことに申し訳なく思う。だが、高校の歴史教科書ほど簡潔に、また手堅くまとめられた概説書はそうそうない」。なるほどです。
その上で、「どの教材でもよいと思うが、定番教科書として『詳説日本史B』『詳説世界史B』(山川出版社)を挙げておこう」と書いています。社会人の学び直しでも、山川の教科書は人気ですよね。
そのほか10冊ほどが紹介されているのですが、次のような言葉にも出合えます。
「ところで、歴史書を読んでいると、ふだん漠然と抱いている偏見や先入観が突き崩されることがある。これもまた歴史書がもたらしてくれる得難い経験である」。
10代の人に限らず、多くの人にこの本や歴史の本を手に取っていただきたい。その思いを強くさせられる言葉です。
本書には、ほかにも、楽しいコーナーがあります。
「本の世界」では、「本の買い方・探し方」や「読書感想文の書き方」などを教えてくれほか、「読んで旅する」、「読書の季節」にも、読んでみたくなる本が多く紹介されています。
この本は10代だけでなく、大学生や社会人にとっても、いい「読書地図」といえます。
お子さんと一緒にこの本を読んで本屋さんに行ったり、気になった本をお子さんにプレゼントしたりするのもいいかもしれません。
「本を読め、とはいわない。
ただ、本があるのを
おぼえておいて欲しいんだ。」
本書の帯にある言葉です。
多感な思春期の子どもたちは、親から「読んでみたら」と言われた本を、なかなか素直には読みたがらないものですよね。
この本を、そしてこの本に紹介されている本を読み、リビングの本棚に飾っておく。
つらいとき、さびしいとき、
ふとそれを目にしたお子さんが手に取り、励まされたり、力をもらったり、癒されたりするー。いつか、そんな時が来るかもしれません。
◇ ◇
4月の特集「ようこそ本の世界へ」は、10回目の今回で終わりにします。
読書や本に関する本は、今後も随時ご紹介していきたいと思います。