爆笑の連続、クイズ感覚で楽しく

爆笑に次ぐ爆笑で、クイズ感覚で気軽に楽しめます。
その上、名作や面白そうな本に出合うこともできて、図書館や司書さんについても詳しく知ることができる、お得な一冊です。

今回ご紹介するのは、福井県立図書館の「100万回死んだねこ 覚え違いタイトル集」(講談社)です。一体どんな本なのか。まずは下の写真をごらんください。

「『100万回死んだねこ』貸してください」―。
「100万回生きたねこ」(佐野洋[作・絵]、講談社)という有名な絵本はありますが…。
そう、この本の「100万回死んだねこ」という書名は、図書館の利用者が、うっかり覚え違えてしまったタイトルが、そのままつけられているのです。


福井県立図書館は、「カウンターで出会ったそんな”覚え違い”をリスト化」し、「覚え違いタイトル集」としてウェブで公開しています。ことし2月22日時点で1003件が掲載されているのですが、本書ではその中から90件を厳選したそうです。

ページをめくれば、笑いの連続です。
本の帯に書かれているものを紹介しますと、「下町のロボット」や「蚊にピアス」、「ねじ曲がったクロマニョンみたいな名前の村上春樹の本」なんてのもあります。

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一方で、「昔からあるハムスターみたいな本」、「からすのどろぼうやさん」などは、いったいどの本だろう、と考えてしまいます。

司書さんたちは、「タイトルがうろ覚えでも、作者の名前があいまいでも、内容の大まかなニュアンスしかわからなくても」本を探してくれます。まさに「利用者さんの覚え違いに爆笑し、司書さんの検索能力にリスペクト」です。

このブログで取り上げた本も何冊か載っています。⇩は分かりますよね?

そう#11でご紹介した「お探し物は図書室まで」(青山美智子、ポプラ社)です。
これにつけられた「解説」も、面白いんです。
「図書館はあらゆる人に開かれています。でもお尋ね者が来たらさすがにどうしましょう…。」

それに続き、「小さな図書室のレファレンスカウンターを舞台に、利用者の本音や悩みを聞いた司書がそれぞれに合った本を選書するという連作短編集です」と、本についての簡単な説明があります。

さらには、「現実にはカウンターで悩み相談に乗って差し上げることは難しいですが、私たちもお探しのものを見つけるお手伝いをしていきます」との一言も添えられていて、図書館が身近に感じられます。

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ちなみに「100万回死んだねこ」と間違えられた、「100万回生きたねこ」は、
「このねこは100万回死んで100万回生きているので、あながち間違いではありません」という温かなコメントに続き、以下のように本を紹介しています。

「100万回の生き死にを繰り返しても泣かなかったねこが、初めて他者に惹かれて愛を知る、絵本の名作中の名作」
もう、読みたくなってしまいますよね。

この「タイトルがうろ覚えでも、作者の名前があいまいでも、内容の大まかなニュアンスしわからなくても」本を探してくれのは、本屋さんも同じです。

このブログの#04でご紹介した大崎梢さんの「配達あかずきん」(創元推理文庫)の第1話「パンダは囁く」には、こんなエピソードも紹介されています。

「ついこのあいだも、年配の女性客に『電車の出てくる本』とたずねられ、店の端から端まで探しまわってしまった。お孫さんのために『機関車トーマス』なのか、映画化された伊集院静の『機関車先生』なのか、はたまたフェイントで白川道の『終着駅』なのか。

まさか、杖とレースのハンカチをお持ちのご婦人が、『電車男』を読みたがっているとは、思いもしなかった」

上品そうな年配の女性が、インターネットの2ちゃんねるへの書き込みを基にしたラブストーリー「電車男」(中野独人、新潮社)を探しているとは…。申し訳ないのですが、笑ってしまいます。

それにしても、少ない情報、誤った情報からでも、きちんと本を探し当てられる司書さんや書店員さんたちはすごいですよね。さすがプロです。

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最後に再び「100万回死んだねこ」に戻ります。
この本では、最後の20ページほどが、図書館や司書の仕事についての説明になっています。その中で、ある司書さんが「司書になろう」と思った、大学での講義のことが書かれています。とても心に響いたので、それを紹介して終わろうと思います。

「講義はいつも、『図書館は民主主義の砦なんです』という一言から始まりました。先生いわく、『住民はいつでも誰でも無料で情報にアクセスできる。それを保証するのが図書館です。だから図書館は民主主義の砦なんです』と。

毎回、毎回、熱を込めて語られる言葉に触れているうちに自分にもその情熱が燃え移ってきて、司書を目指すことに決めました」

同じような経験を持つ人が、福井県立図書館だけでも複数在籍している、ということです。

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