「本の世界」と「世界」へ誘い
パラパラとページをめくれば、世界の本屋さんや図書館の美しいイラストが並び、「本屋の看板猫」も紹介されています。1000冊以上のお薦め本も紹介されていて、「本の世界」そして「世界」へと誘ってくれます。見ているだけでも楽しくなる、すてきな一冊です。
4月の特集「ようこそ本の世界へ」の9回目は、まさに特集にふさわしい本かもしれません。ジェーン・マウント著、清水玲奈・訳の「世界の本好きたちが教えてくれた 人生を変えた本と本屋さん」(エクスナレッジ)です。
著者のジェーンさんはイラストレーター・デザイナーで、ハワイ・マウイ島に在住だそうです。ジェーンさんは「はじめに」を、「この本は、特別な本に出会える『本の宝箱』です。読み終わる頃には、あなたの『読みたい本リスト』の長さは少なくとも3倍になっているでしょう」と書き出し、次のように結んでいます。
「あなたが好きになった1冊を、同じように好きな人がこの世界にはたくさんいるはずです。その『好き』を通して世界を見れば、世界中の人たちがつながり、ひとりぼっちではないことを実感できるようになります。すべての本の存在理由はそこにあります」
では、ページをめくってみましょう。
まず目につくのが、外観や展示の仕方、活動がユニークな本屋さんなどを紹介する「人気の本屋さん」と「あこがれの図書館」のコーナーです。いずれも見開きで、「本屋さん」は20回、「図書館」は6回あり、それぞれ3店舗、3館ぐらいが紹介されています。
本屋さんには、東京の「代官山 蔦屋書店」も紹介されています。クイズや「オーナーお勧めの1冊」などもあって、楽しめます。図書館は、寺院や宇宙船のような驚くような外観のものが多く、実際に訪ねてみたくまります。
お薦めの本は、テーマごとに紹介されています。「子どもが夢中になる絵本」「ポストモダン小説の誕生」といったものから、「みんな大好きなコミック」「料理の極意教えます」「世界の人と共感するために」など、さまざまです。
テーマごとに、短いコメントがついています。たとえば「生きることの意味を求めて」なら、「私たちはなぜ生きていて、どう生きるべきなのか。誰でもそうした疑問を抱き、希望の光を見失うことがあります。ここで紹介する本を読めば、より良い人生を歩み、もっと自分と他者を愛し、幸福になる道を探すための道標になるかのしれません」といった具合です。ここでは、フランクルの「夜と霧」などが紹介されています。
そのほか「本屋の看板猫」や「作家の愛したペットたち」、「作家の書斎」などのページもあり、見ているだけで楽しいですよ。
ちなみに、猫ですが、「古代エジプト人は、パピルスが好きなネズミを追い払うために猫を訓練し、これが世界史における『本屋の猫』の祖先となりました」ということです。
本書には、古典や詩からコミック、自己啓発書、料理本などといった様々なジャンルの本が紹介されていますが、著者のジェーンさんは本に評価を下すことをしていません。それについて
「どんな本でも適切な時に読めば、よりよい人生を送り、世界について、人々について理解するための助けになります」と書いています。