本のご紹介がおろそかになってしまいました。前回は童話屋さんの「ポケット詩集」でしたので(#152 生きる歓びにあふれ 「ポケット詩集」(童話屋) | アルビレックス新潟と本のある幸せ (husen-alb.com))、今回は同じ童話屋さんから出ている谷川俊太郎さんの詩華集3冊を紹介したいと思います。
谷川さんといえば、詩人としてだけでなく、絵本「スイミー」やスヌーピーでおなじみの「ピーナッツ」の翻訳、脚本や評論など幅広い分野で活躍されている方です。
当ブログでも、「へいわとせんそう」(#140 親子で話すきっかけに「へいわとせんそう」(文:谷川俊太郎、絵:Noritake) | アルビレックス新潟と本のある幸せ (husen-alb.com))をとりあげたほか、茨木のり子さんと親しかったことから、147回の「清冽」や148回の「詩のこころを読む」でも触れています。
この詩華集は、「はるかな国からやってきた」「すてきなひとりぼっち」「ぼくは ぼく」の順で出版されました。
まずは「はるかな国からやってきた」の中にある詩を、少しだけお読みください👇
成人の日に
人間とは常に人間になりつつある存在だ
かつて教えられたその言葉が
しこりのように胸の奥に残っている
成人とは人に成ること もしそうなら
私たちはみな日々成人の日を生きている
完全な人間はどこにもいない
人間とは何かを知りつくしている者もいない
だからみな問いかけるのだ
人間とはいったい何かを
(以下略)
「私たちはみな日々成人の日を生きている」「完全な人間はどこにもいない」といった言葉に、はっとさせられ、励まされ、エネルギーをもらえます。
2冊目の「すてきなひとりぼっち」からは、最初に載っている表題作を👇
すてきなひとりぼっち
誰も知らない道をとおって
誰も知らない野原にくれば
太陽だけが俺の友達
そうだ俺には俺しかない
俺はすてきなひとりぼっち
(以下略)
「すてきなひとりぼっち」という言葉が、とても「すてき」です。寄り添ってくれるような温かさを感じます。この詩は、もう2連あります。ぜひ読んでみてください。
そして3冊目の「ぼくは ぼく」からは、こんな詩を👇
うんこ
ごきぶりの うんこは ちいさい
ぞうの うんこは おおきい
うんこというものは
いろいろな かたちをしている
いしのような うんこ
わらのような うんこ
(以下略)
ユーモラスですよね。お子さんが読んだら喜びそうな詩です。
でも、このあとには、次のような言葉もあるんです。
うんこというものは/くさや きを そだてる
うんこというものを/たべるむしも いる
どんなうつくしいひとの/うんこも くさい
どんなえらいひとも/うんこを する
うんこよ きょうも/げんきに でてこい
なんだか楽しくなります。元気になります。
谷川さんには「自選 谷川俊太郎詩集」(岩波文庫)もあります。その「まえがき」で、谷川さんは次のように書いています。
「私は嵩高い詩集を好まないので、この文庫が読者の方々の気軽な座右の、あるいはまた旅先の読み物になってくれることを願っている」
「ぼくは ぼく」にある「自分をはぐくむ」には、こんな言葉があります。
「あなたを導くのは/ほかでもないあなた自身/あなたはあなた自身を超えていく/自分を発見し続けることで/自分を大切に見つめたい/今日も明日もいつまでも」
自分を発見し続け、自分を大切に見つめるためにも、ときには詩に触れてみてはいかがでしょう。