累計700万部突破の人気シリーズ
古書店にまつわる小説として、このシリーズを紹介しないわけにはいきませんね。
4月の特集「ようこそ本の世界へ」の4回目は、三上延さんの「ビブリア古書堂の事件手帖」シリーズ(メディアワークス文庫)です。
シリーズ累計700万部を突破し、ドラマや映画にもなっていますのでご存知の方も多いかと思います。さらには、このシリーズの公式サイトがあり、そこには作品や人物紹介にとどまらず「100秒でわかるビブリア古書堂の事件帖」という動画まであります。それを見ていただければ早いとは思うのですが、公式サイトを参考にしながら簡単に紹介していきたいと思います。
古書と人との謎を紐解く
舞台となるのは、北鎌倉でひっそりと営業をしている古本屋「ビブリア古書堂」です。
店主の篠川栞子さんは、古本屋のイメージに合わない若くきれいな女性ですが、初対面の人間とは口もきけないほどの人見知りです。
しかし、古書の知識は並大抵ではありません。
第1巻の「栞子さんと奇妙な客人たち」では、彼女はこんな風に語っています。
「わたし、古書が大好きなんです…人の手から手へ渡った本そのものに、物語があると思うんです…中に書かれている物語だけではなくて」
人に対してと真逆に、本には人一倍の情熱を燃やす彼女のもとには、いわくつきの古書が持ち込まれることも。彼女は古書にまつわる謎と秘密を、まるで見てきたかのように解き明かしていきます。
そして、この店でバイトとして働きだし、その後、栞さんの夫となるのが五浦大輔さんです。彼は、祖母が残した「漱石全集」の「第八 それから」に書かれたサインをめぐる謎をきっかけに、アルバイトとして働くことになります。
主人公は娘の扉子さんへ
本来なら、栞さんと大輔さんが結婚するということはネタバレになりますから、控えるべきです。しかし、かなり有名なシリーズで、二人の娘の扉子さんが登場する第2シリーズが2018年夏に始まり、この3月25日には3作目の「ビブリア古書店事件手帳Ⅲ 扉子と虚ろな夢」が発売されたばかりで注目を集めています。それに触れないわけにもいかず、ご容赦ください。
まお、この「扉子と虚ろな夢」の発売日に、このブログの#7でご紹介した「レッドスワン」シリーズの著者・綾崎隼さんが、以下のツイートをしていました。
「今日、明日は、ゆっくりと読書を。 まずは最も新刊が楽しみだったシリーズの最新作を読みます。 三上延先生、20周年おめでとうございます! 扉子ちゃんが主人公になってからも、変わらず最高に面白いです」
綾崎さんのいう「20周年」は、三上さんがデビューして20周年、そして本作はシリーズ10作品目(第1シリーズ・栞子編7作、第2シリーズ・扉子編3作)です。
著者の三上さんは、鎌倉市の県立高校から大学へ進んだ後、藤沢市の中古レコード店、古書店でアルバイト勤務をしていたそうです。「知らない駅で降りて、少し時間があると、古本屋を探す習慣がぼくにはあります。」で始まる第1巻の「あとがき」には、以下のような一文があります。
「新刊の本にはない、古本の独特の雰囲気が好きです。人の手を経るうちに、目に見えない薄い膜をまとっていったような―もちろん、新刊のぱりっとした感じも大好きですが。
本の扱い方は千差万別で、きれいに保管している人にも、栞の使い方や帯の取り外しにちょっとした癖があったりします。古本をめくっていると、内容だけではなく、どういう人が持っていたのかに興味を惹かれることがよくありました。」
シリーズに登場する古書は実在するもので、漱石のほか太宰治、司馬遼太郎、宮沢賢治といった作家から、藤子不二雄、手塚治虫ら漫画家の作品が出てきますから、奥深く本の世界へと誘ってくれます。