今回も「センス」について書かれた本をご紹介します。センスは生まれついてのものではく、「方法を知って、やるべきことをやり、必要な時間をかければ、誰にでも手に入るもの」と強調する、水野学さんの「センスは知識から始まる」(朝日新聞出版)です。

水野さんは、NTTドコモの「iD」や、熊本県の公式キャラクター「くまモン」などを手がけたクリエイティブデレクターです。

センスについて水野さんは次のように定義します。「『センスのよさ』とは、数値化できない事象のよし悪しを判断し、最適化する能力である」。

例えば「おしゃれもかっこよさもかわいらしさも」数値化できません。しかし「そのシーン、そのとき一緒にいる人、自分の個性に合わせて服装のよし悪しを判断し、最適化することはできます」。それを「『かっこいい、センスがいい』というのです」。

センスは数字で測れないため、非常に分かりにくいものだと思われがちです。そのため、「『斬新なアウトプットをするには、いまだかつて誰も考えなかったとんでもないことを、センスをもってひらめかなければいけない』と思い詰めてしまう人もいます」と水野さんは書きます。

しかし水野さんが大切だと強調するのは、「普通」という感覚です。「普通こそ、『センスのいい/悪い』を測ることができる唯一の道具なのです」というのです。

では「普通」とは何でしょう? それは「『いいもの』がわかるということ」。「『悪いもの』もわかるということ」。「その両方を知った上で、『一番真ん中』がわかるということ」だそうです。

センスがよくなりたいなら、普通を知るほうがいい。そして「普通を知る唯一の方法は、知識を得ること」なのです。つまりこの本の題名になるわけです。「センスとは知識の集積である」。これが水野さんの考え方です。

センスがいい文章を書くには「言葉をたくさん知っていたほうが圧倒的に有利」です。それは「仕事や生きるということにおいても同様」で、「知識があればあるだけ、その可能性を広げることができるのです」。

よきセンスをもつには「知識を蓄え、過去に学ぶことが大切」なのと同時に、センスとは「時代の一歩先を読む能力」も指すといいます。「知識にもとづいて予測する」こともセンスだというのです。

「知っているか知らないか、あるいは調べるか調べないかで正確な予測ができるかどうかが決まります」。「知識の蓄えと予測の繰り返しで、センスは磨かれていく」のです。

センスを磨く方法は、知識を集積することと客観的になること。逆に言うと、不勉強と思い込みはセンスアップの敵です。「知識は得ようとするか/しないか」というものですが、思い込みは無意識なのでいささかやっかいです。そんな思い込みを外す方法は、「いつもと違うことをしてみること」だそうです。

水野さんは、本屋さんにいるのがとても好きで、「ここにある本の数の分だけ人の考え方がある」と思うと、わくわくするといいます。その上で、「書店は素晴らしい知恵の泉です。センスの源となる知恵にあふれている場所です」と書いています。みなさんも、本屋さんへ行ってみてはいかがでしょうか。

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以下、私が、「付箋した」ものをいくつか紹介して、終わりにします。

センスを磨くには、あらゆることに気づく几帳面さ、人が見ていないところに気がつける観察力が必要です。よいセンスを身につけることも、維持することも、向上することも、研鑽が必要です

センスに自信がない人は、自分が、実はいかに情報を集めていないか、自分が持っている客観情報がいかに少ないかを、まず自覚しましょう。

いくら瞬時に物事を最適化できる人がいたとしても、その人のセンスは感覚ではなく、膨大な知識の集積なのです。センスとはつまり、研鑽によって誰でも手にできる能力と言えます。決して生まれつきの才能ではないのです

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