「あの人はセンスがいい」とか言いますが、センスとは何でしょうか。前号#88で紹介した「暮しの手帖」の前編集長の松浦弥太郎さんには、そのものズバリ「センス入門」(筑摩書房)という著作があり、センスをよくするためのヒントがいっぱい詰まっています。

この本で松浦さんは、センスとは「何を選ぶか」「どう判断するか」という、「選択するちから」だといいます。「まわりに流されることなく、正しい情報や知識、鋭い観察によって、勇気をもって決めるちから」でもあるというのです。

でも、「自分のためだけに選択するのでは、いいセンスとは言いがたい」そうです。たくさんある選択肢から「どれを選ぶかは自分の判断ですが、それによって自分ひとりが満足するのではなくて、たくさんの人に幸せを与えられるかどうかというところが、センスのよい選択のいちばんむつかしい点」であり、「そこがないかぎり、その選択は自己満足で終わってしまう」といいます。

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仕事にしても、暮らしにしても、ある程度のレベルまではどんな人でも到達できると松浦さんは書きます。だけど、そこから先の高いレベルに行くには、「その人が身につけている『センス』の良し悪しで左右される」。この本は「自分の『センス』をよくするための入門」ともいえる一冊だと書いています。

それではセンスを磨くにはどうすればいいのでしょうか。松浦さんは、「まずは、自分の『センス』と向きあう」ことだと書きます。その上で「そこから一歩ずつ、ゆっくりと階段を上がるように『センス』を磨いていきましょう」と呼びかけます。

本書の第1章は「センスのいい人とは、どんな人ですか?」です👇

ここで松浦さんは、たとえば「昨日、僕は、服のセンスのいい人に会いました」といった場合は、「その人が実際には何を着ていたか、思い出せない人こそセンスのいい人です」と書いています。何か意外な感じがするのですが、なぜでしょう。

それは、「何を着ていたかを思い出せないけれど、その人はとてもセンスのいい人だった。こう思ってもらえるくらいその場や居合わせた相手や出来事に自然になじんでいて、不自然さやストレスがない」からです。

目立つことがおしゃれとは限らないのです。パブリックな場所で浮き上がることがないように、自分がどうあるのがいいか考えられる。立ち振る舞い方や話すときの声のトーン、雰囲気、さらには香水などの匂いにも気を遣う―そういう人こそセンスのある人です。

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世の中には、お手本になってくれる人がたくさんいます。だからまず、そういうお手本となるような人たちを、自分のメンターとして見つけて、どのようによい選択やよい判断をしているのか、見たり聞いたりしてみることがとても大切だといいます。

それは、人でなくて物である場合もあります。物であるなら、それらによく触れてみたり、歴史を学んだりして深く知ることが、とても大事になってきます

すすめられたことは試してみることも大事だといいます👇

自分の興味がないもの、好みではないものでも、いいと言われているものは、偏見を持たずに必ず試してみる。みんながいいというものや、誰かがすすめてくれたものは、時間が許すかぎり経験しておくべきで、それをするかしないかの差は、本当に大きいといいます。

世の中や社会、自分のまわりに対しては、どんなことでも受け入れる姿勢をもって、すなおな透明な目で見る。そして、いい所を見つけていくちからをしっかりつけて、たくさんのものを吸収すること―これこそがセンスを磨く第一歩にも通じるといいます。

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本書の第2章は「センスを磨くアイデア」、3章は「センスのお手本」と続き、センスを磨くためのヒントが多く得られます。私が「付箋した」ものの中から、2つだけ紹介して終わりにします。

自分の頭の中でふわふわ漂っている、非常に感覚的なものをつかまえて、ひとつひとつことばに落とし込んでいくというのが「考えること」だと僕は思っています。つかまえてきてことばにしたものを文章にしていくと、さらにいろんなものが見えてきます。

体験してみての失敗・成功、良い・悪いはあまり関係ないのです。どっちでも自分の身につくことになるのですから。そういうことの繰り返しで、ようやくセンスのよさというのは築かれていくのです

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