新米の高校講師が、生徒から学び、生徒の方も先生に教え対話することで共に成長していきます。生徒を一人の人間と尊重して接する教師の姿勢に共感します。
何より、この二人の会話が、笑いありで、とても楽しいです。
そして二人の関係性も、
「一見、希薄ではあるものの根っこの部分で繋がっていて、べたべたしないが素っ気ないわけでなく、情には流されないが情の厚さを知っている。そんなふたりの関係。いいなあ」と、
解説で作家の山本幸久さんが書く通りで、すがすがしいんです。
瀬尾まいこさんの「図書館の神様」(ちくま文庫)の主人公は、早川清という高校講師の女性です。小学校の低学年からバレーボールに打ち込みましたが、高校時代のある”事件”をきっかけに競技を辞めます。しかし、バレーボールから離れることができす、部活の顧問になりたいと進んだ大学を卒業したばかりです。
赴任した高校で文芸部の顧問になるのですが、部員はただ一人。
その垣内君という3年生は、中学までサッカーに打ち込んでいましたが、「高校で、サッカーよりも楽しそうなものを見つけたから」文芸部に入りました👇。
サッカーより、どこが楽しいのでしょうか。垣内君が全校生徒の前で話す場面があります。
「文学は五感を刺激しまくった」
「文学を通せば、何年も前に生きてた人と同じものを見れるんだ。見ず知らずの女の人に恋することだってできる。自分の中のものを切り出してくれることだってできる。とにかくそこにいながらにして、たいていのことができてしまう」
早川先生は、文学部卒なのですが、文学にまったく興味がなく、小説も読まない人です。
垣内君は、その早川先生に対して、川端康成や三島由紀夫、山本周五郎、夏目漱石らの作品について解説してあげたります。私たちにも、ちょっとした、読書案内にもなります。
瀬尾まいこさんの作品を2回にわたってご紹介しました。瀬尾さんといえば、2019年の本屋大賞を受賞した「そして、バトンは渡された」(文春文庫)が有名ですね👇
この「そして、バトンはー」について、女優で歌手の上白石萌音さんは解説で
「最後のページを閉じた後の言い得ぬ感動をいまだに覚えている。静かに本を置き、涙をぬぐい、深く深呼吸をして、しばらくそこから動けなかった。紛れもなく、幸福だった」と書いています。
そして、「瀬尾まいこさん勝手に応援キャンペーン」を始め、「著書を読み漁り、家族や友人に勧めてまわった」ということです。皆さんも、まず一冊読んでみてはいかがでしょう。