今回ご紹介するのは、アートディレクター/クリエイティブディレクターの佐藤可士和さんの「佐藤可士和の超整理術」(日本経済新聞出版社、日経ビジネス人文庫)です。佐藤さんには多くの著書がありますが、2007年に出版されたこの本が初めての著作ということです。

佐藤さんがこの本で述べる整理術とは「いわゆる生活の知恵の類とは全く別物」です。「仕事や人間関係における、本質的問題解決のための”超”整理術」であり、「快適に生きるための方法論」です。

それは、「デスク周りなどの空間から仕事上の問題、人間関係に至るまで、あらゆる場面に応用できる」といいます。

佐藤さんは、「整理を徹底することで、仕事の環境が格段に快適に」なったといいます。整理術を磨くことで「自分でも驚くほど仕事の処理速度が上がりました。頭の中で案件を吟味し、判断を下すまでが、見違えるほど速くなった」とそうです。

本書は①「空間」の整理術②「情報」の整理術③「思考」の整理術―の三つのレベルごとに、具体的な整理術が紹介されています👇

レベル1「空間」の整理術は、快適な仕事環境を作ることが目的です。仕事場や机回り、カバンの中身、文具、書類や資料などをどう整理するか。佐藤さんは経験に基づいた、さまざまな例を挙げ、解説していきます。

その要点としては、①前提として、”すっきりした空間を作ることで仕事の効率が上がり、リスク回避になる”というポジティブな目標を持つこと。

②整理とは、自分の中の不安や”とりあえず”との闘い。それに打ち勝つためには”捨てる”勇気が必要。捨てるモノを決めるためには、プライオリティをつけることが不可欠。厳しく自問自答して、下位のものは時間時期で区切って処分するといいーなど5点が挙げられています。

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レベル2「情報」の整理術では、プライオリティをつけるには、視点を導入することが不可欠だということが書かれています。

自分なりの視点を持ち、「大切な情報を見極め、情報同士の因果関係をクリアにしていくことで、進むべき道が見えてくる」。つまり、情報の整理とは「視点を導入して問題の本質に迫ることで、真の問題化解決を行うためのもの」といいます。

ポイントとして①視点を引いて客観視してみる②自分の思い込みをまず捨てる③視点を転換し、多面的に見てみるーの3つが挙げられています。

レベル3「思考」の整理術は、人の考えていることを整理することです👇

ここで重要なポイントなるのは、「思考を情報化すること」です。「見えないものを見える状態にすれば、あとは『情報の整理術』とプロセスと同じ」で、これをクリアすれば「コミュニケーションがグッと円滑になるなず」といのです。

思考を情報化するのに必要不可欠なのは「”無意識の意識化”というプロセス」だといいます。ちょっと哲学的で難しそうですが、要は、次のようなことです。

「漠然とした状態の心理や、心の奥深くに埋もれている大切な思いなどを掘り起こして、はっきりと意識する。そうすれば、整理したり、秩序だてたりといった次の段階に進むことができます」とし、これも一種のトレーニングであり経験値を積むことが整理術の何よりの早道だといいます。

具体的には、①自分や相手の考えを言語化してみる②仮説を立てて、恐れず相手にぶつけてみる③他人事を自分事にして考えるーなどが挙げられています。

全体的にちょっと難しいな、と感じられる方も少なくないと思いますが、本書には佐藤さんが携わった国立新美術館のプロジェクトや、明治学院大学や今治タオル、ユニクロのブランディングなどでの佐藤さんの思考回路が形にされていて、私はとても面白く読めました。

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