21世紀へと続き世界的ベストセラー

今回は「パパラギ―はじめて文明を見た南海の酋長ツイアビの演説集」(エーリッヒ・ショイルマン著、岡崎照男訳、立風書房)をご紹介します。

この本は、前回#15で取り上げた寺田真理子さんの「心と体がラクになる読書セラピー」で紹介されている本です。第8章「こんなときには、こんな本! おすすめ本ブックガイド」で、「何をするにも時間が足りないと感じるとき」の一冊として紹介されています。

私は、このブログの#04で紹介した大崎梢さんの「平台がおまちかね」(創元推理文庫)を読んで10年以上前に購入しました。

そこに「この本はいい。すごくいい。なんだよ、文明って。西欧文明、どこがご立派なんだ。日本もまったくそうだ。金がどうえらい。人として、大事なものを忘れるんじゃないよ。おれはな、この本に感動してくれる人が大好きだ。信用する」とあって、読みたくなったからです。

時間とは何か、問い直すきっかけに

パパラギは、上の写真にありますように「白人」を指します。本書は、ウィキペディアによりますと、「ヨーロッパを訪問したサモアの酋長ツイアビが、帰国後、島民たちに西洋文明について語って聞かせた演説をまとめたものとしているが、実際はショイルマンの手によるフィクションである」としています。

寺田さんは、「初めて文明を見た南海の酋長によるこの演説集では、文明人の白人(パパラギ)の時間との関り方をこう眺めています」として、「パパラギにはひまがない」の章から、以下のように引用しています。

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「彼は日々の新しい一日を、がっちり決めた計画で小さく分けて粉々にすることで、神と神の大きな知恵を穢してしまう。柔らかいヤシの実をナタでみじんに切るのとまったく同じように、彼は一日を切り刻む。

(中略)パパラギは嘆く。『ああ、何ということだ。もう一時間が過ぎてしまった』。そしてたいてい、大きな悩みでもあるかのように悲しそうな顔をする。ちょうどそのとき、また新しい一時間がはじまっているというのに」

その上で寺田さんは、「小手先の時間術ではなく、時間とは何か、自分は時間をどう捉えているのかというところからあらためて考えなおすきっかけを与えてくれます」と書いています。

もうひとつの「星の王子さま」

「パパラギ」は、SB文庫、絵本(立風書房)のほか、昨年7月には学研プラスから児童書版(訳:岡崎照男 絵:早川世詩男)が出ています。本書については、「現代人は、『身に覚え』ありすぎ!? “SDGs”を100年前に先取りした歴史的名著のビジュアル版!!」と題した学研プラス公式ブログの紹介が分かりやすいので、そこから引用します。

「本書を一言で表現するならば、「もうひとつの『星の王子さま』」がふさわしいかもしれない。
約100年前のドイツで出版された『パパラギ』は、「南国サモア島の族長が西洋文明について語った演説集」という形式で“文明社会が人間にもたらすもの”に警鐘を鳴らした内容。ほのぼのとした雰囲気の中にも、強い寓意性とメッセージがこめられている」。

私は、立風書房版を読み返したのですが、文字が小さくて少し苦労しました。「児童書版」は、オールカラーのイラストつきですので、お薦めかもしれません。
学研プラスの公式ブログは、以下のように終わります。

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本書の冒頭でも語られているが、文明と物質が生活を豊かにすると信じる人々を「パパラギ」と呼ぶのなら、私たち日本人もパパラギと言える。現代人が生きる今の物質主義社会も、自然のままに生きるツイアビから見れば不可思議な世界だろう。

しかし、その中でも「SDGs」のような目標を立てることで、人々が協力し合い、共に暮らしやすい世界を作っていくことは可能。本書で語られていることには、そうした“より良い生き方”のヒントが詰まっている。

100年前の世界から届いたメッセージは、子どもたちだけでなく、親である大人たちにも読んでほしい内容と言えるだろう。

なお、訳者の岡崎照男さんは、児童書版には「昭和26年7月新潟県生まれ。青山学院大学理工学部卒業後、スイス・ベルン大学文学部哲学科入学、同卒業。オランダ・ロッテルダム大学で研究員。故郷新潟に帰り、市民文化運動に参加。現在、新潟大学講師。佐渡弥彦国定公園の山中に居を構える」とあります。

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