悪文と言われるものは、いったいどいう所に問題があるのでしょうかー。

岩淵悦太郎さん編著の「悪文」(日本評論社、角川ソフィア文庫)は、「受け取り手にわかるかどうか、わかりやすいかどうか、という観点から」文章を検討し、その欠点を具体的に示してくれます。

悪文について「はじめに」では、次のように書かれています。「言語表現は、当然相手があるはずであるから、相手にわからないような、あるいは、相手にわかりにくいような文章は、また悪文と言ってよいかも知れない」

この本は、わかりにくく・伝わりにくい「悪文」について詳しく知ることで、副題でもある「伝わる文章の作法」を学ぶことができる、ロングセラーの本です。

最初の章では「悪文のいろいろ」として、「わかりにくい文章」「誤解される表現」「堅すぎる文章」「混乱した文章」の四つを挙げていま👇

このうち「わかりにくい文章」では、「一読しただけでは意味がよく分からない」ような長い文や、主語が文の初めの方に出ていなくて、文の終わりの方に出てくるような文章を、新聞記事などから例に取り、詳しく解説しています。

また「誤解される表現」では、次のような例が示されています。
「前半のような覇気の見られない戦いぶりを続けた」

上の例では、二つの意味に取られてしまいます。「かかる言葉と受ける言葉」などについて書いた#107(#107 読み手にわかりやすい文章を書く「中学生からの作文技術」(本多勝一) | アルビレックス新潟と本のある幸せ (husen-alb.com))をお読みいただいた方ならお分かりですよね。

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「前半のような」が、「覇気」だけにかかるか②、あるいは「戦いぶり」にまでかかるか①で
①「前半にも覇気もなかったが、後半も覇気がなかった」
②「前半には覇気があったが、後半はそういう覇気がなかった」
という、違った意味になってしまいます。

本書は、このほか「構想と段落」「文の切りつなぎ」「文の途中での切り方」「文の筋を通す」「修飾の仕方」「言葉を選ぶ」「敬語の使い方」に分け、懇切に解説しています。

そして、便利なのは、最後に索引代わりに「悪文をさけるための50か条」が掲載されていることです👇

このうち【文章の組み立てに関するもの】では、1、読み手に何を訴えようとするか、その要点をはっきりさせる。 2、読み手のことを考えて構想を立て、その構想によって各分節ごとに段落を設ける。ーなどがあり、索引を兼ねていますから、それが説明されているページも記載されています。

そのほか、【文の組み立てに関するもの】では、8、長すぎる文は、適切に区切る。 9、一つの文の中に、二つ以上の違った事項を盛り込まないように注意する。ーなどで、以下【語の選び方に関するもの】、【敬語の使い方に関するもの】と続きます。

初版が1960年(私の誕生年と一緒!)ということで、浩宮さま(現天皇)のご誕生の際の新聞記事が例として出されるなど、例題が古い感は否めません。しかし、60年以上にわたって版を重ね続けているということは、それだけこの本には学ぶべきことが多いと言えるでしょう。

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