今回は、物理学者の木下是雄さんの名著「理科系の作文技術」(中公新書)をご紹介します。この本で伝えようとする「技術」につて、木下さんは序章で「正確に情報をつたえ、筋道を立てて意見を述べることを目的とする」と書いています。

本書では、論文やレポート、説明書、仕事の手紙の書き方などのコツを具体的に教えてくれます。読者と想定するのは、理科系の若い研究者・技術者や学生ということですが、文系の学生や文系卒の社会人にも、とても参考になると思います。

この本で対象とするのは、「理系の人が仕事のために書く文章で、他人に読んでもらうことを目的とするもの」だけです👇

理科系の仕事の文書は、「情報と意見だけの伝達を使命とするといってもいい」ため、それを書くための心得は、次のように要約できるといいます。

(a)主題について述べるべき事実と意見を十分に精選し、
(b)これらを、事実と意見とを峻別しながら、順序よく、明快・簡潔に記述する

本書は、そのやり方を実際的に、具体的に解説してくれています。全部で11章ありますが、「文章の組み立て」「文の構造と文章の流れ」「はっきり言い切る姿勢」「わかりやすく簡潔な表現」などの章が並んでいます👇

このうち第3章の「文章の組み立て」で木下さんは、論文などは、起承転結の構成ではなく、結論やまとめを冒頭に書く「重点先行主義」で書くべきであると述べています。

その理由の一つとして、世の中が忙しくなっていることもあり、「読者がその論文を読むべきか否かを敏速に判断する便を考えて」ということを挙げています。

つまり、「内容にピッタリの表題をえらび、表題か、あるいは書き出しの文を読めばその文書に述べてある最も重要なポイントがわかるように配慮」することで、その論文を読んでくれる可能性が高まるということでしょう。

これは、論文に限ったことではなく、レポートや手紙などでもいえることでしょう。さらには、ブログや、ツイッターなどのSNSでもそうかもしれません。

上の写真の第8章「わかりやすく簡潔な表現」」を見ていただければお分かりのように、細かいことまで、具体例を挙げながら解説してくれていますので、とても役立つと思います。

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