謎解きをしながら、おすすめの本に出合い、おいしいコーヒーや料理を味わった気分になれる、そんな「おいしい」物語です。

4月の特集「ようこそ本の世界へ」はここまで、村山早紀さんの「桜風堂ものがたり」シリーズ(#02)と、大崎梢さんの「成風堂書店事件メモ」シリーズ(#04)を取り上げました。いずれも書店が舞台の物語でした。今回は「古書カフェすみれ屋」シリーズ(里美蘭、だいわ文庫)を紹介させていただきます。

これは、どういうシリーズかというと、1冊目の「古書カフェすみれ屋と本のソムリエ」のカバーのコピーが素晴らしいので、引用します。

「一冊の本が、人の一生を変えてしまうこともある」

「『僕は信じてるんです。」たった一冊の本が、ときには人の一生を変えてしまうこともあるって』。すみれ屋で古書スペースを担当する紙野君が差し出す本をきっかけに、謎は解け、トラブルは解決し、恋人たちは忘れていた想いに気付く―。


オーナーのすみれが心をこめて作る絶品カフェごはんと共に供されるのは、まるでソムリエが選ぶ極上のワインのように心をとらえて離さない5つの忘れ難いミステリー。きっと読み返したくなる名著と美味しい料理を愉しめる古書カフェすみれ屋へようこそ!」

古書カフェすみれは、渋谷から私鉄で数駅、そこから15分ほど歩いた住宅街にあります。
オーナー店主の玉川すみれは36歳で、古書スペースを担当する紙野頁は「すみれより五つ年下」です。

2人は「すみれがカフェを開業する前に修業のためにアルバイトをしていた新刊書店で出会った。すみれはそこに併設されたカフェで働いていて、紙野君は書店員」でした。すみれが開業プランを同僚と話しているとき、「紙野君が突然、その書店部分を自分に任せる気はないか、と話しかけてきた」という設定です。

「古書カフェすみれ屋と本のソムリエ」は、本の帯にあるように「『お話うかがいました。この本、買ってください』。おすすめの1冊が謎解きのカギになる!? 本をめぐる5つのミステリー!」です。このため、まず紙野君がどういう人物か説明させていただきます。

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紙野君は「文芸書をはじめ、人文、社会、ビジネス書といった文系の書物のみならずコミックにまで広く通じて」いて、「彼がPOPを書いた本は、売上げがそれまでより確実に5割はアップすると言われていた」そうです。すごいですね。

さらに「お客様のわずかな言葉を手がかりに、”お探しの本”をぴたりと的中させることができる」のです。
それだけではありません。「ときに彼は、そうしてお客様が探している本を特定したあとで、『お探しの本が見つかってよかったです。でも、もしかしたら、こちらの本もお役に立つかもしれません』と、探していたタイトルとはべつの本を差し出すこともあった」のです。

客はけげんに思いながらもその本を購入し「つぎに店に来たとき、感謝とともに紙野君にこう言うのだ。自分が本当に欲しかったのは、あなたが薦めてくれたあの本だったのだ、と」。まさに本のソムリエです。

「本を読まなくても、人間は充分幸福に生きてゆける。でも僕は信じてるんです。たった一冊の本が、ときには人の一生を変えてしまうこともあるって」。この紙野君の言葉は、本書の最初の物語「恋人たちの贈りもの」にあります。

癒しの空間で美味しい料理

2作目は「古書カフェすみれ屋と悩める書店員」です。以下は、再びカバーのコピーです。
「『この本、買っていただけませんか?』
『それってつまり―いまわたしが話した不可解さの答えがこのなかにあると?』
すみれ屋の古書スペースを担当する紙野君がお客様に本を薦めるとき、きっと何かが起こる―。


初デートの相手のつれない行動の理由も、見つからない問い合わせ本タイトルも、恋人が別れを匂わせた原因も、…すべてのヒントと答えは本のなかにある!?
心に響く大人気ミステリーシリーズ、待望の第二弾!」

どうでしょう、かなり、このシリーズのイメージがつかめてきたのではないでしょうか。
続いて、古書カフェすみれのオーナー店主・玉川すみれさんは、どんな人物なのか、紹介しましょう。

「私も常連さんになりたい」

すみれさんが客としてカフェに求めるもののひとつは「癒し」です。
学生の頃から友人とカフェへはよく行っていましたが、「社会へ出ると、ひとりで利用することが多くなっただけでなく、そこへ求めるものも少し変わった」といいます。

仕事の合間にほっとできる休憩場所、外出先のオフィス、仕事を終えたあと、ゆっくりと心のなかでスーツを脱ぎ、個人としての自分を取り戻す場所。すみれにとって、カフェは、大人がひとりで自分らしくいられる空間という意味合いが強くなった」。心のなかでスーツを脱ぎ、個人としての自分を取り戻す―素敵な表現ですね。わかりますね。

さらに続きます。
ときに避難所となり、ときに仕事場となることもあるが、やはりそこはいつでもリラックスできる場所であって欲しい。人は、家にこもっているより、他人のなかにひとりでいるほうがくつろげることもある。すみれは経験的にそう考えていて、自分の店はそうした快適さを提供できる場でありたいと思っている」のです。

癒しと快適さを、さらに増してくれるのが、すみれさん手作りの食事やデザートです。
「本のソムリエ」に、すみれさんが自分のためにきゅうりのサンドイッチを作って、食べる場面がります。

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「カウンター席に座り、窓の外に降り注ぐ陽射しを眺めながらサンドイッチを頬張る。パンのふわりとした触感が、しゃきっとしたきゅうりの歯触りを優しく包み込む。ほのかなクリームチーズのコクと芳香が、きゅうりの涼しげな味わいとパンの甘やかさをつないで、ひとつにまとめ上げる。フレッシュミントがきゅうりの爽やかさを引き立て、すみれは味覚を通して夏の訪れを実感した」

いやあ~、おいしそうですよね。食べてみたくなりますよね。
この、きゅうりのサンドイッチですが、作り方が細かく書いてあります。夏が近づいてきたら、作ってみようかな。みなさんもいかがですか。

そのほかにも、食べたくなるような料理、デザートがいっぱい出てきます。
すみれさんは、コーヒーや紅茶、ワインなどのお酒の知識も豊富です。

「本のソムリエ」の帯には、三浦しをん氏絶賛‼として、「すみれ屋が本の中にしか存在しないなんて、口惜しくてなりません。私も常連さんになりたいなー!」という三浦さんのコメントが紹介されています。私も常連になりたいです!

3作目、早く読まなくては…

このシリーズの3作目は「古書カフェすみれ屋とランチ部事件」です。去年11月15日初版ですが、わたしはまだ積読しかしておりません。カバーには
「楽しいデートの後に辛辣なメールが届いたのはなぜ?」
「平和だったシェアハウスで起きた事件の意外な真相は?」などとあります。
気になりますね。早く読まなくては…。

最後に、このシリーズには全巻に、料理などで参考にした「主要参考文献」と「引用文献」が載っていて、読みたい本が増えてしまいます。でご注意を(笑)。

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