今回は、コピーライター、クリエイティブディレクター谷山雅計さんの「広告コピーってこう書くんだ!読本」(宣伝会議)をご紹介します。この本からは、いいアイデアとコピーを繰り返し生み出すための「発想体質」をつくる31のヒントを教えてもらえます。
谷山さんがまず呼び掛けているのが「発想法ではなく、発想体質を。」ということです。「発想法ではなく」とは、発想法に頼るのではなくということですが、谷川さんはこれをスポーツにたとえて説明します。
発想法に頼るということは、「スポーツでいえば、100メートル走のときにスタートラインにしゃがみ、クラウチングスタイルを取ってから、『どうやったら速く走れるだろうか、いいタイムが出せるだろうか』と考えるようなもの」です。
でも、「スタートの直前にちょっと工夫したぐらいで、タイムが伸びるはずはない」ですよね。速く走るためには、「競技会以前から、きちんとしたトレーニングをする必要があります」。
その上で「広告制作でも、本当にいいアイデアやいいコピーは、発想法を知ればすぐに誰にでもつくれるというものではありません。ふだんから、発想ができるような体質、つまり自分のアタマを〝発想体質〟にしておく必要があるわけですね」と書いています。
本書は、下の見出しのように、発想体質に変えていくための31の方法が、項目ごとに書かれています👇
最初に、ひとつだけお願いとして谷山さんが挙げているのが、「『なんかいいよね』という言葉を禁句にしてほしい」ということです。
「いい映画を見てドキドキしたり、いい音楽を聴いてホロッとしたり、いい小説を読んでジーンとしたりしたとき」に、「なんかいいよね」という言葉を発しない。「明日から、それをきっぱりとやめにほしいのです」というのです。
「そのかわりにこう考えてみてください」と続けます。かわりにどうすればいいのでしょうか?
それは、「『なぜいいのか。これこれこうだからじゃないか』『なぜカッコいいのか。こういう工夫をしたからじゃないのか』」と、考えてみることだそうです。
こういう思考を働かすことができなければ、「賭けてもいいですが、あなたはけっして『モノのつくり手』になることはできません。一生、『受け手』のままで終わると思います」とまで書いています。
「受け手は、一生、『なんかいいよね』『なんかステキよね』と言い続けます。『つくり手』は、『なぜいいのか。これこれこうだからじゃないか』と考え続けます。広告の世界でも、いい仕事をしている人は、やはり『なぜ』を考え続けている人です」というのです。
谷川さんは、おもな仕事に、東京ガス「ガス・パッ・チョ!」、資生堂/TSUBAKI「日本の女性は、美しい。」、新潮文庫「Yonda?」などがあります。
本書では、実際のコピーやプレゼンの企画書などを紹介しながら説明されていますので、とても分かりやすく、理解しやすいと思います👇
具体的な内容の紹介は遠慮しますが、谷山さんが最後の「エンジンとガソリン。」で書いている、論理と感性やセンスの関係についてが面白かったので、簡単に紹介します。
この本では、ずっと「コピーやアイデアの発想を”論理的”にとらえることを強調」しいますが、谷山さんは、「なかには、『感性やセンスはいらないのか』と疑問を抱く人もいるかもしれません」と書きます。
これについては、もちろん、コピーは論理だけで書けるものではなく「感性やセンスも必要」だといいます。でも、谷川さんは、その割合は「人によって違いはあるでしょうが、3割程度ではないか」といいます。
7割は論理であり、「どう書けば伝わるのか、どういうコピーが十分な役割を果たすのか、という、ここまでさんざんに説明してきた『コピーの論理』です」というのです。
この論理と感性の関係は、「コピーを書く作業ではエンジンとガソリンのようなもの」だといいます。「エンジンが理論、ガソリンが感性で、2つが合わさって、コピーライティングという動力を生み出す」。
このガソリンという”感性”は、谷川さんがなにかを教えたぐらいで「急に増えたりはしません」。そして、谷川さん自身も「どうひいき目に見ても『感性=ガソリン』は人並以下しかもってないない人間です」といいます。
「でもというか、だからというか」谷川さんは、「エンジンについては、かなり追求し続けてきた」そうです。このエンジンこそが「発想体質」であり、「コピー体質」なのです。
「たとえガソリンがちょっとしかない人でも、最高の技術の低燃費エンジンを身につけられれば、速く走ることもできます。つまり、いいコピーやいいアイデアを考えられるようになるわけです」。
コピーだけでなく、文章を書いたり、あるいは仕事やスポーツなどにもいえることではないでしょうか。この言葉から、私はやる気と勇気をもらいました。