今回はクイズから始めたいと思います。次の二つの場合、あなたならどうしますか?
①あなたは薬屋の店主です。店の奥の部屋で従業員が2人が、あなたが新しく作ったシロップ状の頭痛薬を水で割って飲んでいます。
②アメリカのゴールドラッシュの時代です。あなたは行商人で、長い船旅を終えたばかりです。船で売れ残ったテント用の帆布の巻物を持ってサンフランシスコの街を歩いていると、探鉱者がやってきて「ズボンはあるかね」と聞かれます。さて、どうしますか。
普通の人なら①は、従業員を怒る。ひょっとしたらクビにするかもしれません。②なら「ズボンなんかないよ。あるのはテント用の帆布だけだ」と答える―といったところでしょうか。
お分かりの方も多いかと思いますが、①②は、これがきっかけとなって、大人気商品が生まれました。
①に直面したジョージ・ペンパートンは、興味をそそられ、水で割った頭痛薬を飲んでみると、悪くありません。これにソーダ水を入れてシューッと泡を出したら、もっといい味なると、ソーダ水を加えて「コカ・コーラ」という名前をつけて店で売り出しました。
②のリーバイ・ストラウスは、市場に出かけて品薄になっている商品の一つがズボンだということに気づき、さらに採掘の仕事には丈夫なズボンが欠かせないと知り、仕立屋を雇って帆布を使ったオーバーオールを作りました。ジーンズの誕生物語です。
以上は、「仕事は楽しいかね?」(デイル・ドーテン、きこ書房)に紹介されています。 この2人が①②のような機会に巡りあったのは、運が良かったとも言えます。でも普通の人は「たぶん何十もの素晴らしいアイデアに、目の前を通り過ぎさせてきてしまっている」と著者は書いています。
「もし宇宙が信じられないような素晴らしいアイデアをくれるとして、きみはそれにふさわしいかね?」と問い、答えます。「僕たちはね、失敗するのを怖がりすぎて、それが宇宙からの贈り物だってことにきづこうとしないんだ」
この本は、仕事、人生に行き詰まっている「私」に老人が行う一夜の講義という形をとっていて、14の章で構成されています👇
このうち第4章の「明日は今日と違う自分になる、だよ」では、老人は「目標を設定すると、自己管理ができているような気がするものだー」と語り、次のように指摘します。
「たいていの人は、マンネリ化した生活から抜け出すために目標を設定する。だけど、いいかい、今日の目標は明日のマンネリなんだよ」
その上で、老人は「僕がいままで掲げた目標が一つだけある」といいます。何だと思いますか?
それは「明日は今日と違う自分になる」です。変わることは「ただひたすら、より良くなろうとすることだ。人は<違うもの>になって初めて<より良く>なれる」というのです。
この本には「試してみることに失敗はない」「遊び感覚でいろいろやって、成り行きを見守る」「”適切な時”とか”完璧な機会”なんてものはないということ」―といった魅力的な言葉であふれています。
そして最後に老人は「私」に、こう言います。
「アイデアをいっぱい持つこと。ありとあらゆることをやってみること。明日は今日とは違う自分になること。そして朝を待ち焦がれる、幸せなサムライの一人になってくれ」
「仕事は楽しいかね」は、ほかに第2巻と「最終講義」の計3冊に加え、マンガもあるようです。私は最初の巻しか読んでいませんが、物語になっていてとても読みやすいうえに、多くの気づき、刺激をもらいました。仕事や人生に悩んでいる方がいらっしゃいましたら、手に取ってみてはいかがでしょうか。