子育てやスポーツの指導などでは、ついつい怒鳴ったり、逆に世話を焼きすぎたりしがちです。でも、叱らず、問いかけることで、子どもたちは自分で考えたり、自発的に何かに取り組んだりするようになるー。
「叱らず、問いかける 子どもをぐんぐん伸ばす対話力」(廣済堂ファミリー新書)で、著者の池上正さんは、こう説きます。
池上さんは「Jリーグ京都サンガFC普及部部長」で「小学校にサッカーの出前授業『つながり隊』を実施。前所属のジェフ千葉での活動を含め、これまでのべ50万人以上のこどもを指導してきた」方だそうです(本書出版の2013年4月1日時点)。
この本では、序章の「問いかけると、子どもは考え始める」に続き、
①叱らない選択
②「自分からやる子」の育て方
③叱らず、問いかける
④「問いかけ教育」が子どもを変える
⑤「自分で考える子」を育てる
の五つの章に分かれ、具体的に分かりやすく書かれています。
序章で池上さんは、「35年間で延べ40万人以上の子供たちに向き合ってきた私は、彼らをめぐる今の状況を非常に危ないと感じている」と書いています。
「核家族化や地域社会の崩壊などさまざまな影響を受け、学校や家庭での子育てが非常に難しくなりました。それとともに、子どもが自発的に物事に取り組む、自分で考える、自主性や自立心といった『自』のつく力が、極めて脆弱になっています」というのです。
その上で、池上さんは、「子どもたちを変えるには、大人が変わらなければなりません。保護者の方はもちろん、スポーツや教育の現場で子どもと向き合う方が、暴力に頼らない指導メソッドとして、本書を活用していただければ幸いです」と書いています。
「子どもと向き合う」人だけでなく、あらゆる大人に読んでもらいたい一冊です。
「叱らず、問いかける」は、現在は電子書籍だけみたいです。そこで、池上さんの本の中から他に文庫本を1冊ご紹介します。
こちらは「『叱らない』育て方」(PHP文庫)で、「『自分からやる子』に変わる7つの方法」という副題がついています。
この本では、副題にある7つの方法が、以下のようにそれぞれ1つの章になっています。
①こどもの心で受け止めて、大人の態度で伝える
②楽しませて伸ばす
③問いかけて伸ばす
④負けず嫌いにする
⑤真似させる
⑥自分で考えさせる
⑦未来を想像(イメージ)させる
各章には「まとめ」もついていて便利です。
最後に、この本の「はじめに」の最後にある池上さんの言葉を紹介します。
「子どもたちの育ち方は変わっているのに、できないことがあったら罰を与えるといった古いやり方は通用しません。怒鳴る、叱る、指示命令する。これらを軸とした子育ての概念を捨てませんか? わが子が本当にかわいいのなら、あなたが変わりましょう」