きょうは「こどもの日」でした。天候にも恵まれ、行楽地で楽しく過ごしたご家族の方も多かったのではないでしょうか。
今回は、「こどもの日」に合わせ(ちょっと遅くなってしまいましたが…)「子どもはなぜ勉強しなくちゃいけないの?」(おおたとしまさ、日経BP)をご紹介します。
この本は、育児・教育ジャーナリストの、おおたさんが編者となり、8人の識者が、「なぜ勉強しなければいけないのか」という問いに答えています。
特徴的なのは、「子ども編」と「大人編」に分かれていて、同じ人が「子ども編」では子ども向けにやさしく、わかりやすく書き、「大人編」では親などの大人向けに詳しく解説していることです。
具体的にはどんな感じなのか、そのうちの瀬戸内寂聴さんを見てみましょう。
寂聴さんは「勉強しないと心が栄養失調になる」と題した「子ども編」を、次のように書き出しています。
「勉強とは食事と同じですよ。人間は食事をして体に栄養を取りこんで、成長しますよね。勉強とは知識を取りこんで頭や心を成長させることです。勉強とは、いわば『心の栄養』を取ることです」
では、「心の栄養」が足りないとどうなるのでしょうか。寂聴さんは「心の栄養失調」になり、「まず想像力がなくなります」と書きます。
想像力がないと、将来の夢を思い浮かべることもできないので、「がんばろうという気持ちもわいてきません」。さらに、想像力がないというのは「どんなことをしたら友達が喜ぶのか、傷付くのかわからないということですから、何が正しいことで何が悪いことなのかの判断もできなくなります」というのです。
その上で寂聴さんは、次のように書いています。
「ろくに勉強もせず、心の栄養失調のまま大きくなってしまった人は、自分が心の栄養失調であることに気付くことすらできません。こうなってしまったらおしまいです。こういう人のことを本当のバカというのです。だから子どものうちにしっかり勉強して『心の栄養』をたっぷり取っておきましょう」
寂聴さん絵らしい表現ですね。まるで法話を聞いているようです。
では「大人編」はどうでしょう。
基本的に書かれていることは同じです。
ここで、まず見出しを見てください。
「子どもの得意なことを見つけてやるのが教育の第一歩」
「『先生は尊敬すべき人』と教えるべき」
「子どもはテストの点でなく親の顔を気にしている」
「1行でも印象に残る文章を見つければ立派な読書」
「大人編」」では、ご自身の体験をもとに、語り掛けるように、親にアドバイスしてくれています。詳し説明はネタバレになってしまいますので避けますが、寂聴さんの「大人編」の最後の言葉だけを以下に紹介します。
「今はきれいな絵本がたくさんあるんですから、小さなころから絵本をたくさん見せてあげてほしいと思います。それだけで子どもの好奇心が刺激されますよ。世の中には本があるということをまず子どもに教えてあげたいですね。そうすると一人でも本を読んで楽しい時間を過ごせる子どもになります。『勉強しなさい』だなんて言う必要もなくなるはずです」
寂聴さんのほかにも、多彩な方々が「なぜ勉強しなくちゃいけないの」という問いに答えてくれています。
作家や、思想家、女子大学学長、生物学者、脳科学者…。みなさんが、子どもにもわかるように書いておられます。それでも、よくわからないというお子さんもいるでしょう。
編者のおおたさんは、「おわりに」で、こう綴っています。
「仮に子どもが本書を読んだとしても、期待するような効果はきっとすぐには表れないだろうと思います。勉強すべき理由が分かることと、勉強したくなることはまた別の話だからです。
ただし、効果はすぐには表れないだけで、必ずいつかは表れるだろうと思います。そのときがやってくるのは、1年後かもしれませんし、5年後かもしれませんし、もっとずっとあとになるかもしれません。
本書を読んだ子どもたちの心の中に、なんらかの小さな種がまかれ、それがいつか芽吹き、花を咲かせれば、たとえ本書がきっかだったということを本人がすっかり忘れてしまっていても、それでいいのだと思います」
その一方で、おおたさんは「すぐに変化が起こるとしたら、大人のほうではないかと思います。本書を読んで、勉強や教育の目的に対する思い込みや勘違いを思い知らされた大人の読者は多かったのでないかとと思います」と書いています。
ぜひ、親世代の方々に読んでいただき、親子で語り合っていただければと思います。