爽快な、飛び込みの世界
爽やかな季節になりました。4月も20日となり、今後は新潟県内でも気温が20度以上の日々が続くと予想されています。つい最近までダウンの上着が手放せなかったのに、早いものです。さて、今回は水泳の飛び込みを描いた 森絵都さんの「DIVE!!」(角川文庫)を紹介します。
「間違いなく面白い。かつてなく面白い。スポーツ・シーンがリアルで鮮やかで、文章が爽快だ。こういう本を読みたかった!」。作品は、上、下の2巻ですが、佐藤多佳子さんが下巻の解説に書いています。
「DIVE!!」は、飛び込みのうち、高飛び込みを中心に描きます。それは「高さ10メートルからの飛翔。時速60キロの急降下。わずか1・4秒の空中演技」です。
「DIVE!!」は、解説の佐藤さんの言葉を借りれば「際だった個性と才能を持つ3人の少年たちが、独特の深い友情とライバル関係の中で、それぞれの技を磨き上げて、オリンピック代表を目指して対決する物語」です。
こう書くと、「スポ根」物語のように思われてしまうかもしれませんが、決してそうではありません。作品には準主役ともいえる女性コーチ出てきます。飛び込みの元選手で、アメリカで飛び込みのコーチングを6年間学んできた人ですが、次のように話します。
「飛び込みの試合はインターバルが多いし、サッカーやバスケに比べると体力的には一見楽そうに見えるけど、あの長時間にわたる試合で最後まで神経のかよった演技をするためには、人並みはずれた筋力や集中力が必要だわ。それらすべての土台になるのは結局、基礎体力だと私は思ってる」
高飛び込みは10メートルの高さから水面に飛び込むわけですから、体に負担がかかります。コーチは選手たちがかげをしないためにも、基礎の練習を重視します。さらには、アジア合同強化合宿のメンバーに選ばれた選手が腰を痛めていることに気づき、辞退を決めます。
厳しい合宿に参加して「ますます腰を悪化させるより、今は日本での治療をに専念すべきだと私たちは考えた」からです。何よりも優先して選手たちのことを考え、将来を大事にする。ここにはアスリートファーストの考えがあります。
このコーチは、選手たちにこんなことも言っています。
「はじめる前から無理だとか言うの、あなたの悪い癖ね。何事もやってみなければわからないじゃない。すべてはこれからよ」
「なんていうのかしら、自分で自分をものすごく限定しちゃってる気がするのよね。たしかに、今の自分を見つめることは大切よ。でも、未来の自分まで決めつけることはない。勇気を出して殻をやぶったら、きっとそこから新しい未来がはじけるはずだわ」
私も62歳という年齢で、自分で壁をつくったり限定したりすることなく、何事にもどんどんチャレンジしようー。今回読み直してみて、そう背中を押されました。
「水曜ロードショー」などでおなじみだった映画評論家の故水野晴郎さんじゃないですけど「いやぁ、読書って本当にいいもんですね~」
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きょう20日、新潟市の信濃川やすらぎ堤で、こいのぼりたちが気持ちよさそうに空を泳いでいました。チューリップも満開で、とても爽やかでした。以下、その写真です。