私たち、頑張らなかったから生き残りましたー。「はずれ者が進化をつくる 生き物をめぐる個性の秘密」(稲垣栄洋、ちくまプリマ―新書)は、帯にある大きな文字のキャッチコピーが目をひきます。
著者の稲垣さんは、農学博士で静岡大学教授、専攻は雑草生態学という方です。稲垣さんはまず「はじめに」で、「生物の世界では、『個性』という言葉は、『多様性』という言葉に置き換えられるかもしれません」と書きます。
その上で、「生物の進化は、まさに多様性を創り上げてきた『多様性の進化』でもあるのです」といいます。こんな風に書くと、難しそうに思うかもしれませんが、若い読者の人たちにもわかりやすい表現を用いている「プリマ―=入門書」ですからそんあことはありません。理解しやすく、グングンひきつけられます。
👇の本書の帯を見ていただくとわかりますが、この本は章ではなく「一時間目~九時間目」に区切られています。それぞれ、「個性とは」「ふつうとは」「らしさとは」「生きるとは」何かなど、私たちが悩んだり、考えたりしていることについて向き合い、問いかけ、解説し、助言してくれています。
七時間目の「『強さ」とは何か?」では、著者は「皆さんは、自分の中に弱さを見つけることがありますか? 弱い自分が嫌になることがありますか?」と問いかけます。
それに対しての答えは、「そうだとすれば、幸いです」。それは「何しろ自然界を見渡してみれば『弱い生き物たち』が繫栄しているからです。『弱い』ことは成功の条件であるかのようです」というのです。
続く8時間目「『大切なもの』は何か?」では、「雑草は踏まれても~」に続いて、どんな言葉が入るでしょう?というクイズから始まります👇
ふつうは「立ち上がる」を思い浮かべます。しかし「それは間違いです」。踏まれても立ち上がらないことこそが雑草のすごいところで、本当の雑草魂だというのです。どういうことでしょうか?
それは、植物にとって最も大切なことは、花を咲かせて、種を残すこと→踏まれても立ち上がろうとするのは、かなり無駄なエネルギーを使っていることになる→上に伸びることができなくても、横に伸びたり、茎を短くしたり、地面の下の根を伸ばしたりして、なんとかして花を咲かせようとするー。
やみくもに立ち上がることはせず、花を咲かせて種を残すという大切なことを忘れず、大切なことをあきらめない。「『踏まれても踏まれても大切なことを見失わない』これこそが、本当の雑草魂なのです」
おとなが読んでも面白く、学びや気づきが得られると思います。お薦めです。